2015.10.26更新
ワクチンの防腐剤
今年も木枯らしが吹き、インフルエンザの季節を迎えようとしています。各医療機関ではインフルエンザワクチンの予防接種が始まっておりますが、小さなお子様がいるお母さんや妊婦さんからワクチンの防腐剤についてよくお問い合わせがあります。この防腐剤にはエチル水銀という有機水銀が含まれています。水俣病で知られているメチル水銀とは異なりその毒性は遥かに低く、速やかに体外に排出されますので、一般に小児や妊婦さんでも問題ないとされています。そもそも防腐剤は1928年にオーストラリアでジフテリアのワクチンに細菌が混入して多数のこどもが死亡するという事故があってから添加されるようになりました。当時と比べて現在では当然衛生管理の技術が発達しておりますので、防腐剤の添加は徐々に減少する傾向にあるのも事実です。インフルエンザワクチンは毎年大量に作製され、広範囲に流通しますので、安全のため添加されているものが多いようです。また、防腐剤無添加のワクチンは一度開封しますと早く使用する必要がありますので、現状では管理する上でも手間がかかり、どうしても割高となってしまいます。むしろ、ワクチン内のエチル水銀の影響を心配するならば、マグロや金目鯛を一人前食するとメチル水銀がワクチンの62倍摂取することになりますので、こちらの方が危険ということになります。日本製のワクチンはWHOの基準をはるかにクリアしていますので、過度にご心配される必要は少ないと思います。
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2015.10.16更新
インフルエンザワクチン昨今
今年もインフルエンザの予防接種の時期が来ました。ニュースでは学童で既に流行の兆しがあり、学級閉鎖している地域もあると報道され、今シーズンは早目の接種が勧められています。シーズン前半はほとんどがA型で、現在の不活化ワクチンはH3N2(A香港型)とH1N1/09(いわゆる新型)に対応するものです。小児(2~8歳)でみると、新型に対する有効率は60%に達するものの、香港型には15%程度しか効かないようです。よく予防接種したのにインフルエンザに罹ったというのは大方、香港型だそうです。「じゃあ、打ってもしょうがない」と思われる方もいると思いますが、専門家の意見では接種していると、脳症などの重症化へ移行することがないと述べています。最近は経鼻接種のインフルエンザ生ワクチン(フルミスト)が話題になっておりますが、針で刺さないので痛くないという利点がありますが、日本では認可されていないため、個人輸入する必要があり従って、値段も高くなっております。しかし、直近の米国の報告は、2~8歳の小児では香港型にも新型にもほとんど効かないというショッキングなものでした。この結果を踏まえて、日本のある研究施設で新たな不活化経鼻ワクチンを開発中で、治験段階ではその有効率はかなり高いものになっているそうです。ただし、実用化は4年先の見通しだそうです。年齢制限が49歳以下ということもあり、我々の世代には当面関係がありませんが子供さんには期待したいものです。
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2015.10.06更新
救急医療現場で気付いたこと
相も変わらず、月2回程度のペースで救急病院で診療を行っています。1次がメインの2次も診るというところですが、脳外科が有名な病院なので、めまい、立ちくらみ、意識レベルの低下を主訴にした高齢者がひきり無しに搬送されます。その多くは脳外科の先生がいない病院の罹り付け患者さんです。救急隊が連絡しても脳外科が無いからといって断わられるそうです。搬送された患者さんの頭部CTで異常がなければ、内科に回されるのが普通です。高齢者なのでたたけば誇りが出るのはしょうがないのですが、内科的理由でめまいや立ちくらみが生じている場合が多いのです。罹り付けが有床診療所であれば、脳に異常が無いのであれば個人的に転院をされた方が患者さんの為になると思うのです。内服薬のことや、いままでの経過が現場では全く分からないこともあります。高齢者を管理する時は必ずといって頭の問題がありますので、無床診療所では仕方ありませんが、専門でないからといって拒否していると日本の高齢者医療は立ちいかなくなるような気がします。これは単に医者の数を増やしただけでは解決できない課題だと思います。憂えているのは私だけでしょうか。
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