妊婦さんおくすり相談外来

第1, 3, 5金曜日 9時~12時45分
第2、第4木曜日 9時~12時45分
火曜、木曜、金曜 16時~18時30分

外来担当医師 川本 徹 名誉院長

妊娠中の薬剤が胎児に与える影響について

薬の副作用による胎児への影響は大きく「催奇形性」と「胎児毒性」に分けられます。妊娠2か月から4か月は器官形成期であり、薬剤に対する反応が過敏な時期で、2か月ごろは中枢神経、心臓、手足の形成、3か月から4か月は性の分化、口蓋の形成に影響が出ることがあります。4か月以降は薬剤による催奇形性は起こらなくなりますが、胎児毒性と言って、胎児の発育が抑えられる、あるいは臓器に障害が現れることがあります。一方、受精後から妊娠1か月は受精卵に影響がでなければ、奇形などの後遺症は生じませんが、影響が出た場合は流産してしまいます。この時期の薬の内服は慎重に行う必要がありますが、同時に妊娠に気が付きにくい時期でもありますので、少しでも疑いのある場合は服薬を控えてください。

しかしながら、実際にほとんどの薬剤の奇形発生率は、自然奇形発生率を大きく上回るものがなく、薬剤との因果関係は証明されていません。従って、妊娠中の急な病気を治療せず、苦痛を感じることは胎児にもストレスとなりますので、必要があれば服薬を躊躇することなく、病気を治療することをお勧めします。

基本的に妊娠期間を通じて、

  • 総合感冒薬、解熱・消炎・鎮痛薬、鎮咳去痰薬、気管支拡張薬
  • 抗ヒスタミン薬の一部、
  • 胃腸薬(一部不可)、一部の制吐剤、
  • 鉄剤、
  • 緩下剤、
  • 抗ウイルス薬、抗菌剤(一部)
  • 片頭痛薬(麦角アルカロイド以外)
  • 免役調整役(潰瘍性大腸炎治療薬)
  • 抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン製剤(バセドウ病、橋本病など)
  • ステロイド剤


は短期間、あるいは医師の監督のもとに内服することは可能です。しかし、それぞれの妊娠期間において注意しなければならない薬がありますので、以下に示します。

妊娠初期(2か月~4か月)

ビタミンA製剤、免疫抑制剤(アトピー治療薬)、活性型ビタミンD3製剤、アダパレン製剤(尋常性ざ瘡治療薬)、ドンペリドン(制吐剤)、コルヒチン(痛風治療薬)、尿酸排泄性高尿酸血症治療薬、プロスタグランジン誘導性制酸・胃粘膜保護剤、選択的エストロゲン受容体調整薬(骨粗鬆症予防薬)、プロスタグランジンE1製剤(腰部脊柱管、血栓血管炎治療薬)、イミダゾール系、トリアゾール系抗真菌薬、エルゴタミン製剤(片頭痛治療薬)、糖尿病薬、テトラサイクリン系抗生剤、バクタ、スタチン(脂質異常症治療薬)、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミン受容体拮抗薬の一部(抗アレルギー薬)、ワーファリン(抗凝固薬)、抗てんかん薬、抗C型肝炎ウイルス薬の一部

妊娠中期(4か月~7か月)

降圧薬(ACE阻害薬、ARB)胎児の腎機能障害を引き起こす

妊娠後期(8か月~)

消炎鎮痛薬 大量投与で動脈管収縮による肺高血圧症や心不全の危険性

ベンゾジアゼピン系抗不安薬 新生児薬物離脱症候群 授乳拒否、嘔吐、ふるえ、不機嫌など

心当たりのある方は、主治医にお問合せの上、服薬を相談するようにして下さい。
決して、自己判断で服薬を中断しないよう、宜しくお願い致します。

一方、漢方薬は一般的に副作用が少なく、安心して服薬ができる印象がありますが、長期に服薬するものが多く、決してすべての漢方薬が妊娠や胎児に影響を与えないということは無いので、注意する必要があります。特に妊娠2か月から4か月の器官形成期の服用は控えた方が賢明です。その中でも比較的安全に処方できる漢方薬を疾患別に掲げます。

便秘症

桂枝加芍薬湯60、小建中湯99、大黄甘草湯84、潤腸湯51

インフルエンザ 麻黄湯271/2+桂枝湯451/2
風邪 葛根湯1、桂枝湯45、香蘇散70、参蘇飲66、麦門冬湯29
花粉症 小青竜湯19、苓甘姜味辛夏仁湯119、五虎湯95+小青竜湯19、 麻黄湯27+越婢加朮湯28
安胎薬 当帰芍薬散23、芎帰膠艾湯77

また、漢方薬の副作用でみられる流産に注意した方がいい漢方薬を以下に示します。

乙字湯3、八味地黄丸7、大柴胡湯8、桂枝加朮附湯18、加味逍遙散24、桂枝茯苓丸25、真武湯30、大黄牡丹皮湯33、潤腸湯51、疎経活血湯53、治頭瘡一方59、桃核承気湯61、防風通聖散62、調胃承気湯74、大黄甘草湯84、六味丸87、大防風湯97、通導散105、温経湯106、牛車腎気丸107、三黄瀉心湯113、桂枝茯苓丸加薏苡仁125、麻子仁丸126、麻黄附子細辛湯127、大承気湯133、桂枝加芍薬大黄湯134、茵蔯蒿湯135
尚、妊娠5か月を過ぎれば、上記以外の漢方薬を内服することに問題は無いと思われます。

*赤字の漢方は慎重投与すれば、副作用の心配はないという意味です。
チガソン(合成レチノイドで乾癬治療薬、催奇形性)大量のチョコラA(ビタミンA製剤催奇形性)、プログラフやトピロリック軟膏(免疫抑制剤でアトピーの治療薬、胎児毒性催奇形性)、エディロール(活性型ビタミンD3製剤、催奇形性)、ディフェリンゲル、エピデュオゲル(尋常性ざ瘡治療薬、催奇形性(安全性が確認されていない))、ナウゼリン(制吐剤、催奇形性)、コルヒチン、ユリノーム(痛風、高尿酸血症治療薬、催奇形性)、サイトテック、ウルグート(制酸・胃粘膜保護剤、子宮収縮、流産、催奇形性)、エビスタ、ビビアント(エストロゲン類似体、催奇形性、胎児毒性)、オパルモン、プロレナール(腰部脊柱管、血栓血管炎治療薬、子宮収縮)、イミダゾール系、トリアゾール系抗真菌薬(フロリード、ジフルカン、ブイフェンド、催奇形性)エルゴタミン製剤(片頭痛治療薬クリアミン、子宮収縮、胎盤、臍帯の血管収縮)、糖尿病薬の大部分(催奇形性)、テトラサイクリン系抗生剤(胎児毒性)、バクタ(催奇形性)、スタチン系脂質異常症治療薬(催奇形性)、リザベン、アレギサール、アタラックス(抗アレルギー薬、催奇形性(口蓋裂))、ワーファリン(抗凝固薬、催奇形性)、抗てんかん薬(デパケン(バルプロ酸ナトリウム)、アレビアチン、ヒダントール(フェニトイン)、テグレトール(カルバマゼピン)、催奇形性)、レベトール(リバビリン抗C型肝炎ウイルス薬、催奇形性

大黄 瀉下、子宮収縮
芒硝 瀉下、利水
桃仁 子宮興奮、駆瘀血
紅花 子宮緊張、駆瘀血
牡丹皮 子宮内膜充血、駆瘀血
牛膝 子宮収縮、駆瘀血
附子 頻脈、利水
呉茱萸 子宮興奮、利水
半夏 利水
厚朴 子宮収縮
枳実 子宮収縮
薏苡仁 子宮興奮、利水
蘇木 駆瘀血

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