痔のとりせつ外来

火曜日・水曜日 9時30分~12時45分
外来担当医師 亀山 尚子

火曜日、木曜日、金曜日 16時~18時30分
外来担当医師 川本 徹 名誉院長

女性特有の「痔」があることをご存じですか?

名誉院長から長い間、痔でお悩みの女性の方へ

日本人の3人に1人は「痔」だといわれています。

一言で「痔」といっても、実は、男性、女性によって、その種類もできる場所も、大きく異なります。
それには、体の作りや筋肉の強さ、生活習慣など、さまざまな原因が考えられますが、そのなかでも最も大きいのが「出産」です。

出産時のいきみは、通常の排便時の何倍もの力が肛門にかかります。それが原因で、多くの女性が「痔」になってしまうのです。

しかし、出産後、育児や家事に忙しく、また我慢強い女性たちは、違和感があっても、病院に行く時間がとれず、放置するか、薬局で買った薬を塗るかで、気づいたら痛みが薄れていたということも少なくありません。

もしかしたら、「痔」は男性がなるもので、女性である自分が「痔」になんてなるはずがないという思い込みもあるかもしれません。

しかし、出産が原因の、治っていた、もしくは気づかなかった「痔」が、その後数十年経ってから、再発することがあるのです。しかし、ある程度の年齢になってからの「痔」を根治させることは、非常に難しいですから、出産後、肛門周りの違和感や気になる症状があったときは、できるだけ早く治療することをおすすめします。

また、お産以外でも、便秘や下痢、排便時のいきみ、冷えなども、「痔」の原因になりますので、ふだんから注意することが大切です。

もし、肛門の周りの違和感が続いたり、繰り返したりした時は、早めの受診をおすすめします。

「痔」で病院に行くことは、決して恥ずかしいことではありません。早期発見、早期治療が良いのは、「痔」も同じです。気になる症状がある方は、早めに受診して、医師による診断・治療を受けましょう。

痔の種類と特徴

「痔」は大きく3つの「痔」に分けることができます。

いぼ痔

「いぼ痔(疣痔)は、おしりの血行が悪くなることにより、血管の一部がこぶ状になった状態です。さらに、直腸側にできる「内痔核」と肛門側にできる「外痔核」に分けられます。

肛門周辺の粘膜の下には、血管が集まって肛門を閉じる動きをするクッションのような部分(静脈叢:じょうみゃくそう)があります。そこへ強い力がかかることで、クッションを支える組織(支持組織)が引き伸ばされ、クッション部分が大きくなるために、出血したり、場合によっては、肛門の外に飛び出たりするようになります。これを「いぼ痔(疣痔)」といいます。

女性の「痔」は、多くは、出産時に強くいきむことが原因でできる「いぼ痔」です。ひどいと、「いぼ痔」が肛門から飛び出てしまう「脱肛」になってしまう場合もあります。

「いぼ痔」は、初期は排便時のいきみが取れると自然に肛門内に戻るのですが、進行すると、指で押さなくては戻らなくなります。さらにひどくなると、いつも「いぼ痔」が出っぱなしになり、激痛が走ったり、飛び出したいぼが血流障害を起こしたりと、悪化することもあります。

出血しても、「痛み」伴わない場合は、「いぼ痔」を疑ってみましょう。

切れ痔

「切れ痔」は、裂肛ともいわれるとおり、肛門の粘膜が切れたり、裂けたりした状態をいいます。
便秘がちで便が硬いと、肛門粘膜に傷がつき、痛みや出血が見られます。痛みが強いために排便を我慢することで、また便秘になるという悪循環を繰り返すことで、粘膜はますます傷つき、亀裂が深くなります。そのため、排便のたびに痛みと出血を伴います。
「切れ痔」を繰り返していると、肛門の粘膜が肥厚し硬くなります。それに連れて、次第に肛門が狭くなり、小指がやっと通るぐらいの細さになってしまうことがあります。
そうなってしまうと手術による肛門形成術が必要になる場合もありますから、出血が見られたら、早めに受診することをおすすめします。
男女とも「切れ痔」になりますが、肛門括約筋の弱い男性に多い傾向があります。最近は、ウォシュレットを使う家庭が増えたため、出血に気づかない場合もあるので、注意が必要です。
痛みを伴う出血が「切れ痔」の特徴です。

あな痔(痔ろう)

肛門線などが大腸菌などに感染すると、肛門の周りに膿が溜まる肛門周囲膿瘍になります。それが進行して、膿が外に流れ出るトンネルができた状態を「あな痔」といいます。
肛門周囲に溜まった膿が炎症を起こすと、熱を持ったり、痛みを生じたりするようになり、進行すると、膿が出て肛門の周りに湿疹や皮膚炎が生じます。
この状態で放っておくと、皮下にトンネルができあがり、膿がトンネルを通って外に出てきます。肛門の周りには、固いしこりやはれが生じ、そこから常に膿が出てジクジクした汚れた状態になります。
これは「あな痔」の典型的な症状ですが、ここまで進行すると自然に治ることはありません。すぐに専門医を受診しましょう。
「あな痔」になるのは、ほとんどの場合、男性です。

痔の原因

「痔」には、次のような原因が考えられます。

便秘

便秘になると、腸内に溜まった便が肛門部を圧迫、血行を悪くします。
また、排便のために強くいきむことになり、肛門に力がかかるため、「いぼ痔」 や「切れ痔」が生じます。

下痢

下痢は、通常の便より勢いがあるため、直腸粘膜や肛門部を刺激し、傷を作ることがあります。また、肛門部のくぼみに付着した便は、「あな痔(痔ろう)」の大きな原因となります。

冷え

肛門部のうっ血を招く冷えは、「痔」を誘発します。

刺激物

タバコには血管を収縮させる作用があるため、痔にもよくありません。
過度のアルコールやからい食品も、肛門部を刺激します。

メンタルヘルス

メンタルヘルスと免疫力は大きく関係しています。メンタルヘルスが低下すると、体を正常に保とうとする働きが鈍るからです。特に、免疫力の低下は、細菌に感染しやすくなるため、「あな痔」の大きな要因になります。

環境

トイレに行きたいときにトイレに行かないでいると、そのうちに便が固くなり、いきまなくては排便ができなくなります。それが原因で「切れ痔」や「いぼ痔」が生じることがあります。

「痔」を予防するには

「痔」は、広い意味で、生活習慣病のひとつですから、予防するためには、食生活や排便習慣の改善が必要です。また、せっかく治療しても、治療前と同じ生活を繰り返せば、再発してしまう可能性がありますから、自分の生活習慣を見直し、改善することを心がけてください。

規則正しい排便生活を身に付けましょう

便意があったら我慢せずトイレに行くことや便を無理に出そうとしていきみ続けたりしないことが大切です。また、便秘を引き起こす無理なダイエットや、下痢の原因となるアルコールや刺激物の摂り過ぎは控え、腸の動きを促す適度な運動を毎日の生活に取り入れましょう。

食生活を改善しましょう

朝食をきちんと摂ることで、規則正しい排便をつけ、ヨーグルトなどで、腸内環境を整えたり、善玉菌を増やしたり、ゴボウや海藻類、きのこ類などの水溶性の繊維質を食事に取り入れたり、たっぷり(1日コップ8杯程度)飲んだりすることで、自らが「痔」にならない環境を作ることが大切です。
*じゃがいも、さつまいもなどの不溶性の繊維質を食べ過ぎると、便秘になることがあるので、注意が必要です。

肛門部を清潔にしましょう

不潔にしておくことで、痔になったり、症状が進んだりすることがあります。
ウォシュレットや消毒液などを上手に利用することで、常に肛門部を清潔にしておくことで、「痔」を予防することができます。お風呂に入って血行を良くすることも効果があります。

お尻への負担を減らしましょう

長時間同じ姿勢をとり続けないこと、過労やストレスを溜めないことが、大切です。お尻を冷やすことも「痔」の原因になりますから、注意が必要です。

「痔」の日帰り治療のすすめ

当クリニックでは、「痛くなく」「血が出ず」「侵襲が最小限」である「痔」の治療を行っています。「切らない」から「出血・痛みが少ない」「すぐに帰れる」のです。

「痔」の治療は、入院が必要な手術、しかも痛いと思われていませんか?
当クリニックでは、「いぼ痔(内痔核)」の治療に、切らない、出血や痛みが少ない内痔核硬化療法(ALTA)を採用しています。

内痔核硬化療法とは、ジオン注という注射剤を患部に注入、痔に流れ込む血液の量を減らすことで、痔を硬くして、粘膜に固着・固定させる治療法をいいます。「切らない」ので、体への負担も少なく、術後の合併症の心配もありません。

また、外痔核は最小限の切除術、「切れ痔(裂肛)」や軽度の「あな痔(痔ろう)は根治術を併用しますが、その場合も入院の必要性はありません。

内痔核硬化療法の流れ

1、準備

・点滴を行い、血圧や心電図の変化を測るためのモニターを装着します。
・膝を曲げた状態の右側臥位の体位の状態で、患部以外に布をかけます。

2、手術治療

・肛門周囲に局所麻酔後、肛門鏡を挿入、直腸肛門内を消毒します。
・痔核の大きさを診断、注入するジオン剤の量を決定します。
・薬液を十分に浸透させるために、ひとつの痔核に4カ所注射をします。薬液注入時に、肛門部に鈍痛を感じる場合があります。
・薬液が痔核に行き渡るように、医師が指でマッサージを繰り返し行います。
・痔核の大きさや数にもよりますが、治療時間の目安は約30分です。
・肛門内に痛み止めの坐薬と止血目的のスポンジを挿入します。
・約1時間、止血剤と抗生剤が含まれた点滴を行いながら、ベッドで休んでいただきます。

3、手術後

・万が一、術後に痛みが出た場合は、痛み止めの内服および坐薬の頓用をしていただきます。
・原則として4日、7日、14日、1カ月、2カ月、3カ月後に、経過観察を行います。
*経過により回数は変わります。

4、その他

・全国平均の1年後の再発率は約5~10%です。
・まれに、術後2カ月、3カ月目に、注射部位の潰瘍形成による出血がみられることがありますが、その場合は、内服と外用(軟膏)で軽快します。
・血圧低下や下腹部痛、嘔気、肛門部の違和感、排便困難、痛み、出血、発熱などの症状が認められる場合がありますが、ほとんどは一過性のものですので、ご安心ください。気になる症状が現れた場合は、すぐにご連絡ください。

5、術後の注意

・手術終了後は止血の目的から、排便を1時間ほどがまんしていただいています。当日はできるだけ水分を摂取し、便を硬くしないように注意してください。
・術後数日間は、極力安静を心がけてください。また、冷えたり、長時間同じ姿勢をとったりすることのないように注意が必要です。

内痔核硬化療法の費用

血液、レントゲン、心電図、薬代 約20,000円
外痔核切除、肛門ポリープ切除、裂肛や痔ろう根治術が加わる場合 上記に+約5,000円

*すべて保険適用

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