腸内フローラ・腸の不調外来

水曜日 9時30分~12時45分

外来担当医師 亀山 尚子

2012年 日本大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部 初期臨床研修医
2014年 同 内科学教室
2015年 北里大学北里研究所病院 総合内科
2016年 慶応義塾大学医学部 消化器内科学教室
2018年 佐野厚生総合病院 消化器内科
認定医・専門医 日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会認定消化器病専門医

腸内細菌のバランスを調べ、治療法を決定します

ヒトの腸内細菌は、Firmicutes門(乳酸菌、連鎖球菌、クロストリジウム属など)、Actinobacteria門(ビフィズス菌など)、Bacteroides門(バクテロイデス属など)、Proteobacteria門(大腸菌、サルモネラ菌、ビブリオ菌、ピロリ菌など)に属する細菌しか存在しません。

腸内細菌のバランスが崩れると病気に

腸内細菌のバランスが崩れると病気に

腸内細菌は、腸内フローラ(細菌叢)を形成してヒトと共生することで代謝系や免疫系に影響を与えていると考えられています。 腸内フローラは善玉菌:日和見菌:悪玉菌が2:7:1の割合で構成されるのが理想ですが、そのバランスが崩れると様々な病気が発生します。

腸内細菌とアレルギー及び炎症性腸疾患

アレルギー性疾患の発症の原因の一つに、腸管からのアレルゲンの吸収によるアレルギー反応が指摘されています。例えば、放線菌群の仲間であるビフィズス菌が少ない乳幼児は、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患にかかりやすいと言われています。ビフィズス菌はリンパ球などの免疫細胞に作用して異常な免疫反応を抑えたり、腸管粘膜のバリアーであるIgAを増やしてアレルギー物質の侵入を阻止したりする働きがあります。一般的に、母乳で育った乳幼児や自然分娩児は母乳中のラクトフェリンの影響で、ビフィズス菌をたくさん持っていると言われています。
最近では制御性T細胞(Tレグ)という、過剰な免疫反応を抑えるリンパ球が腸管内に存在することが注目されてきました。腸管内のTレグが減少すると、ヘルパーT細胞を制御できず、アレルギー反応を引き起こすIgEが過剰に放出されます。いわゆる即時型アレルギーが生じ、その結果、腸炎、皮膚炎や気管支炎が起こることが知られています。このTレグを増やすためにはクロストリジウム属の菌の中で、善玉菌のクロストリジウム ブティリクムやフェーカリバクテリウム プラウスニッツィなど短鎖脂肪酸の一つである酪酸を作る腸内細菌が必要です。また、Tレグは腸内細菌の種類を区別して有害な菌が増えると、IgAの産生を増やすこともわかってきました。例として潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の患者さんの腸管内では、クロストリジウム属の菌が減少し、バクテロイデス門やプロテオバクテリア門の細菌が増加していることが指摘されています。中でもフゾバクテリウム バリウム菌は潰瘍性大腸炎の患者さんに多いことが解ってきており、発症機序の解明に向けて研究者から注目されています。
また、肥満者においては,ファーミキューテス門の細菌が増加し,一方でバクテロイデス門の細菌が減少していることが報告されています。ファーミキューテス門の細菌は難消化性の食物繊維を分解し,短鎖脂肪酸などのエネルギー源を生成します。ファーミキューテス門の細菌の増加がエネルギー吸収効率を上昇させることにより肥満の発症の一因になっている可能性が考えられます。例えば、日和見菌のバクテロイデス・テタイオタオミクロンの割合が減少し、ファーミキューテス門の細菌が相対的に増えると、肥満や糖尿病になりやすいという報告が実際にありました。テタイオタオミクロン菌には食物繊維を短鎖脂肪酸に分解し、脂肪の蓄積や血糖の上昇を抑える働きがあります。すなわち、腸内細菌種の減少(単純化),少ないはずの細菌種の異常な増加,優位であるはずの細菌種の減少などに代表される腸内細菌叢の乱れ(dysbiosisと言います)が短鎖脂肪酸を生成する菌種を減少させ,結果的に宿主のエネルギー吸収効率が変化し,さらには摂食中枢
に一部作用することにより脂肪蓄積が促進され,肥満をもたらす可能性が示唆されるのです。

また、最近の知見ではバクテロイデス フラジリス菌や歯周病菌であるフゾバクテリウム ヌクレアタム菌が増えると大腸がんの危険性が高まるという報告もあります。これらの菌が産生する毒素による慢性炎症による発癌がマウスの実験で確認されています。胃癌同様、大腸癌においても炎症性発癌のメカニズムが示唆されるようになり、除菌による大腸癌予防が注目されるようになっています。

以上のように、腸内の細菌分布が何らかの原因で変化すると、体の恒常性が保てずに様々な病気を発症してしまうのです。

これらの病気の予防、早期発見のためにはまず患者さんの腸内細菌の状況を知ることが必要ですが、約400種類もあると言われている腸内細菌のDNA(遺伝子)をt-RFLP法という方法で網羅的に調べることが可能です。この方法で腸内細菌のバランスを判定し、治療法を決定します。
難治性の過敏性腸症候群や頑固な便秘症の方にも有用と考えられていますので、お困りの方はご相談ください。検査料は30,000円(税別)となります。サイキンソーについて
当院では腸内フローラの解析結果に基づき、以下の治療提案しています。

腸管バリアー強化作戦

IgAを増やし、IgEを減らすラクトフェリン

腸管粘膜は、IgAという免疫グロブリンの働きによりアレルギー物質の侵入を阻止していますから、IgAが多いとアレルギーになりにくいと考えられます。善玉菌、特にビフィズス菌を多く摂取するとIgAの分泌が促進され、腸管粘膜のバリアーが強化されます。ラクトフェリンという母乳に多く含まれているタンパク質にビフィズス菌を増やす働きがあり、結果的にIgAが増えます。一方、ラクトフェリンはヘルパーT細胞に働きかけ、IgEを低下させるため、肥満細胞からのヒスタミン放出を減らし、アレルギーを起きにくくすると考えられております。アレルギー疾患でお悩みの患者さんにはビフィズス菌とラクトフェリンを同時に摂取することをお勧めします。当院ではラクトフェリンをサプリメントとして提供しております。費用は1カ月分が7,800円(税別)です。

善玉菌増加計画

糖尿病や肥満症の予防に効果的なサプリメント

前述のように短鎖脂肪酸を産生する善玉菌や日和見菌が糖尿病や肥満の予防に有用と考えられますが、これらの菌を直接摂取できるような製剤は今のところありません。従って、ご自身の持つ善玉菌や日和見菌を食事で増やすことが必要になります。
ごぼう、オクラ、やまいもなどに多く含まれている水溶性繊維質やブルーベリーなどから摂取できるポリフェノール、大麦やきのこに含まれているβグルカンやオリゴ糖は、善玉菌の餌となり、菌を増やす作用があることが証明されています。食事でこれらの栄養素を摂取することが難しい場合は、サプリメントを紹介しております。

大腸がん、潰瘍性大腸炎除菌療法

著明な科学雑誌に掲載された、バクテロイデス・フラジリス菌やフゾバクテリウム ヌクレアタム菌が大腸がんの、フゾバクテリウム バリウム菌が潰瘍性大腸炎の原因に成り得るという情報に基づいています。フラジリス菌やヌクレアタム菌はピロリ菌の除菌にも使われるメトロニダゾールが有効とされています。この菌を除菌する抗生剤はピロリ菌除菌にも使用されていますので、安全性は確保されています。除菌後は善玉菌を増やすことで、フラジリス菌やヌクレアタム菌を再増殖させないようにすることが大切です。一方でバリウム菌はメトロニダゾールに加え、アモキシシリンとテトラサイクリンの3剤併用療法で効果のあったことが報告されています。いずれにしても、除菌薬の効果は永久ではないので、治療を繰り返す必要があることを理解してください。

皮膚科より

お肌の悩みについて腸内環境とお肌

一般に皮膚のターンオーバーは28日とされていますが、加齢や紫外線照射、睡眠不足などで56日程度まで遅れてきます。最近では腸内細菌の悪玉菌が増加すると皮膚のターンオーバーに悪影響を及ぼすことが知られてきました。腸内フローラのバランスは善玉菌:悪玉菌:日和見菌の割合は2:1:7が理想的と言われております。腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌(特にウェルシュ菌)が増加すると、タンパク質やアミノ酸が悪玉菌によって代謝されることにより、アンモニア、硫化水素、インドール、フェノール、-クレゾールなどが産生され、腸管内から吸収されたこれらの腐敗物質が血管を経由し、皮膚に到達します。これらの成分が汗として分泌されると体臭に悪影響を及ぼすだけではなく、皮膚に蓄積することで角化細胞の正常な分化を抑制し、皮膚のターンオーバーを遅らせます。その結果、ダメージを受けた皮膚の修復ができなくなるため、皮膚のくすみや乾燥、色素沈着が引き起こされると考えられているのです。悪玉菌の中でもウェルシュ菌、フェノールやインドール産生菌を除菌することが良いのですが、悪玉菌のうち、クロストリジウム属のある種の菌が無いとTregリンパ球が活性されないため、クローン病や潰瘍性大腸炎が起きやすくなるという負の作用もありますので、除菌治療は慎重に行われなければなりません。腸内フローラのバランスを改善するもう一つの方法に睡眠を十分取ることがあげられます。最近の研究では質の良い睡眠は腸内細菌によるビタミン代謝や核酸代謝を改善し、皮膚の新陳代謝を促すことが示されました。また、睡眠中は成長ホルモンが分泌されるので、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が低下し、皮膚の細胞分裂が抑制され、傷んだ皮膚の修復が遅れることになります。睡眠不足が美容に悪いと言われる所以です。昔から快眠、快便というように、良い睡眠は腸内フローラを改善し、便秘を解消するものと思われます。

ビタミンとお肌

皮膚のターンオーバーを促進するものとして他にビタミンB2(脂質代謝を促進し、皮膚の健康状態を保つ)、ビタミンB6(タンパク質をアミノ酸に分解し、新陳代謝を活性化することで皮膚の状態を改善する)、ビオチン(糖の再利用やアミノ酸の代謝に関わり、皮膚形成に携わる)、ハイチオール(皮膚の代謝を改善し、メラニン色素の生成を抑える)、ビタミンA(皮膚細胞の正常な分化と増殖に関与)、ビタミンD(皮膚細胞の分化誘導を調節)や亜鉛(活性酸素によるダメージから皮膚細胞を守る)などのミネラルが知られています。これらの物質を食事だけで摂取するのは困難で、サプリメントや薬剤で摂取することを勧めます。

お肌と栄養、ホルモンバランス

一方、肌の老化の原因のもう一つに皮下組織のコラーゲン量の低下があります。女性ホルモンのエストロゲンの低下が原因とされています。最近、女性ホルモンを補充する代わりに天然の女性ホルモン様物質であるエクオールが注目されています。エクオールは大豆イソフラボンの中のダイゼインが腸内細菌の一種のエクオール産生菌の代謝作用によって作られますが、エクオールの持つエストロゲン作用、抗酸化作用、血管拡張作用により、皮膚のコラーゲン量が増加し、更年期の女性の肌に潤いをもたらすと言われています。しかしながら、このエクオール産生菌は誰でも持っているという訳では無く、日本人女性の場合、約半数しか持っていないことが分かっています。エクオール産生菌を持っていても、エクオールは体内で産生されてから1~2日しか持たないため、毎日、大豆イソフラボンを摂取することをお勧めします。1日に必要なエクオールは10㎎と言われていますが、お豆腐ならば2/3丁、納豆ならば1パックに相当します。コラーゲン量を増やすためには、その他にビタミンDは組織内のコラーゲン生成を促しますし、ビタミンCは鉄分の存在でコラーゲン繊維の産生に関与しています。タンパク質と鉄分もコラーゲンの材料として重要な栄養素ですので、赤身の肉を食べることをお勧めします。

腸内細菌のバランスを調べ、治療法を決定します

ヒトの腸内細菌は、Firmicutes門(乳酸菌、連鎖球菌、クロストリジウム属など)、Actinobacteria門(ビフィズス菌など)、Bacteroides門(バクテロイデス属など)、Proteobacteria門(大腸菌、サルモネラ菌、ビブリオ菌、ピロリ菌など)に属する細菌しか存在しません。

腸内細菌のバランスが崩れると病気に

腸内細菌のバランスが崩れると病気に

これらの腸内細菌は、腸内フローラ(細菌叢)を形成してヒトと共生することで代謝系や免疫系に影響を与えています。
腸内フローラは善玉菌と悪玉菌で構成されていますので、そのバランスが崩れると様々な病気が発生します。
例えば、放線菌群の仲間であるビフィズス菌が少ない乳幼児は、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にかかりやすいと言われています。ビフィズス菌はリンパ球などの免疫細胞に作用して異常な免疫反応を抑えたり、腸管粘膜のバリアーを強化してアレルギー物質の侵入を阻止したりする働きがあるのです。一般的に、母乳で育った乳幼児や自然分娩児はビフィズス菌をたくさん持っていると言われています。

最近ではバクテロイデス・テタイオタオミクロンという菌の割合が減少し、Firmicutes門の細菌が相対的に増えると、肥満や糖尿病になりやすいという報告がありました。
テタイオタオミクロン菌には食物繊維を低鎖脂肪酸に分解し、脂肪の蓄積や血糖の上昇を抑える働きがあるからです。
また、バクテロイデス・フラジリス菌が増えると大腸がんの危険性が高まるという報告もあります。
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の患者さんの体内では、クロストリジウム属の菌が減少し、Bacteroides門やProteobacteria門の細菌が増加していると指摘されています。

このように、腸内の細菌分布が何らかの原因で変化すると、体の恒常性が保てずに病気を発症してしまうのです。
予防のためにはまず患者さんの腸内細菌の状況を知ることが必要ですが、約400種類もあると言われている腸内細菌のDNA(遺伝子)をt-RFLP法という方法で網羅的に調べることが可能です。この方法で腸内細菌のバランスを判定し、治療法を決定します。
難治性の過敏性腸症候群や頑固な便秘症の方にも有用と考えられていますので、お困りの方はご相談下さい。検査料は30,000円(税別)となります。

大腸がん予防除菌療法

大腸がん予防除菌療法

ネイチャーという科学雑誌に掲載された、バクテロイデス・フラジリス菌が大腸がんの原因に成り得るという情報に基づいています。
この菌を除菌する抗生剤はピロリ菌除菌にも使用されていますので、安全性は確保されています。
除菌後は善玉菌を増やすことで、フラジリス菌を再増殖させないようにすることが大切です。

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