クリニックブログ

2024.03.09更新

サルコペニアに関するコラムを書きました。

令和6年2月15日、NHKの「あしたが変わるトリセツショー」で放送された”衰えない筋肉”はサルコペニア予防の内容でした。当院もサルコペニア外来を開設していたので、事前に取材があり、これを契機にコラムを書いて見ました。診断、予防のための運動や体操、腸内細菌叢や栄養面について述べ、最後に最近の治療法について触れています。サルコペニアは老化の一現象として捉えられやすいですが、若いかたにもコロナ禍の影響で増えているそうです。将来、寝たきりにならないためにも早期の予防が大切ですね。治療に関しては保険適応外のものも多く、犀星の杜クリニック六本木で相談に乗っていますので、関心のある方はどうぞ宜しくお願いいたします。

 

 

投稿者: みなと芝クリニック

2024.03.09更新

NMNの効果、その後

NMNサプリメントを飲み始めて1年が経ちました。よく眠れるようになり、疲労が蓄たまらない、視力が改善した、などを実感し、周囲からも元気になった、若返って見えるという評価を得ていますが、そうは言っても、気のせいだと思われますので、家内の発案で、我が家のシナモン君(オス、年齢18歳)に飲ませて見ました。18歳は人間でいうと90歳に近い年齢に相当し、最近では、食が細くなり痩せてきて、足元もおぼつかないようになっていたのですが、1か月もしないうちに足腰がしっかりしてきて、よく動くようになり、食欲も増して体重が増えてきたのです。明らかに改善してきたので、やはりNMNは効果があるのだなと確信した次第です。体内のNMNの量はNAD+を測定することで推定できるうようになりました。最近疲れやすいな、もっと元気になりたい方にはお勧めです.

サプリメントや検査は六本木にある「犀星の杜クリニック六本木(03-3401-3141)」で常時受け付けておりますので、どうぞお問い合わせください。

投稿者: みなと芝クリニック

2024.03.04更新

サルコペニアの予防を目的とした栄養療法、再生治療

サルコペニアを予防するための栄養学
タンパク質は筋肉をつくるために欠かせない栄養素です。サルコペニアの予防には、1日に体重1㎏あたり1.2~1.5gのタンパク質を摂ることが必要とされています。大体、体重が60㎏の人ならば、72~90gを1日に摂らなくてはなりません。しかし、例えば高タンパク・低カロリーである鶏のささみを100g食べたとしても、それに含まれているタンパク質の量は23g。1日量の1/3程度しか賄えません。毎回の食事の中でバランスよく、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などからタンパク質を摂ることが大切です。不足分はサプリメントで補充するのも一手です。

そのタンパク質が分解されてできるアミノ酸の中で、体内で合成できない、もしくは合成量が必要に満たないものを必須アミノ酸といいますが、その中でもロイシン、バリン、イソロイシンは特に筋肉を作るタンパク質の材料やエネルギー源となる分岐鎖アミノ酸(BCAA)として知られています。高齢者ではタンパク質同化(タンパク質を作る)ホルモン【テストステロン、エストロゲン、成長ホルモン、インスリン様成長因子(IGF-1) 】が減少して、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが増加して来るので、筋肉の破壊が進んでしまう傾向にあります。実際、筋肉量の減少が認められた高齢女性にロイシンを多く含む栄養剤の投与を行ったところ、筋肉量、筋力、歩行速度のいずれも改善したという報告があります。BCAAはまぐろの赤身、かつお、あじ、さんまに多く、鶏肉、牛肉、卵などにも多いので、これらの食品をバランス良く摂取し、足りない分をサプリメントで補給するのが良いでしょう。

ビタミンDはカルシウムと共に、骨をつくるために必要な栄養素として知られています。一方で、血中のビタミンDレベルが低い人は、握力や歩行速度などの身体機能が低いことや、40歳以上の日本人女性ではサルコペニアと骨粗しょう症の発症の間に強い関連があることが示されており、ビタミンDは骨だけではなく筋肉にも作用することが解っています。その機序として、血中カルシウム濃度を一定に保ち、神経の働き良くすることで筋肉を正常に収縮させて、筋力を保つこと、もう一点はがんや慢性疾患、老化などで筋肉量が減り萎縮していく過程をビタミンDがブロックすることで、筋肉量を保つことが言われています。実際、ビタミンDが欠乏している高齢者にビタミンDを補給したところ、下肢筋力の向上や転倒リスクの軽減が見られたという結果が報告されています。
ビタミンDはキノコ類やイワシ、サケ、サバなどに多く含まれていますが、サプリメントもいいです。また、日光に当たると皮膚でビタミンDは合成・活性化されますので、適度な日光浴がおすすめです。

L-カルニチンはエネルギー代謝に深く関わる重要な栄養素です。L-カルニチンは生体内での合成にはリジン、メチオニン、ビタミンB3(ナイアシン)、B6、C、鉄を必要としますが、大部分(3/4)は食事から摂取したものとなります。L-カルニチンの主な働きは脂肪をエネルギーに変えることにより、体脂肪を減少させたり、体重を減らしたりすることですが、L-カルニチンのほとんどは筋肉に貯蔵され、筋肉のエネルギー源として活用されています。また近年では脂肪をエネルギーに変換する際、抗酸化作用により筋肉細胞の障害を抑えて骨格筋を保護する効果が示唆され、サルコペニア予防として注目されています。L-カルニチンは羊肉や牛肉に多く含まれていますが、高齢になると一般に肉類の摂取が減り、食事から補給するのが困難となりますので、サプリメントや薬で補給することもできます。

タウリンはアミノ酸の一種で、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし、血圧を正しく保ち、また肝臓の解毒能力を強化し、アルコール障害にも有効な作用を示します。それだけではなく、最近、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが保有するデータを解析したところ、65歳以上に限定すると、タウリン推定摂取量が多い人は8年間における筋力低下が少ない人と比べて、半分程度に抑制されていることが判明したのです(図3)。マウスを用いた研究でも、骨格筋中のタウリンが欠乏すると、骨格筋の老化が促進されたという結果が報告されています。つまり、タウリンもサルコペニアを予防する重要な因子であることが示唆されたのです。タウリンはイカやタコ、貝類、甲殻類及び魚類に多く含まれているので、日本人はタウリンを摂取しやすいと考えられますが、近年、食習慣の変化からその摂取量は低下傾向にあると言われています。

京丹後市の高齢者にはサルコペニアと診断された方が非常に少ないという特徴があることが報告され、腸内細菌叢を調べたところ、ラクノスピラ属の酪酸菌が多いことが判明しました。その機序はまだはっきりとしていませんが、酪酸菌が体内の炎症反応を抑えることにより、筋萎縮を減らし、タンパク質同化を改善すること、筋肉におけるエネルギー代謝が効率よく行われ、運動時の易疲労性に対し予防的に働くこと、酪酸が筋肉の遺伝子発現に影響を与え、加齢による筋萎縮を抑制することなどから、サルコペニアを抑制すると考えられています。

腸内で酪酸菌を増やすためには食物繊維、特に水溶性食物繊維の多い食事を心掛けることです。京丹後市の高齢者は、海藻、全粒穀物(玄米、雑穀など精製されていない穀類)、葉野菜、根菜、豆類、イモ類など食物繊維が豊富な食品を毎日摂取している人の割合が高く、運動能力においては握力の低下、歩行速度の遅れが全国平均をかなり下回っています。マウスを用いた実験でも、肉を与えず、豆類など植物由来タンパク質や食物繊維の多い食品を十分に与えていれば、筋肉量が増加しサルコペニアが改善することが証明されています。食事を変えることが難しい場合でも、最近では、酪酸菌を含むサプリメントも開発されていますので、利用するのも一方法です。

同じく腸内細菌の話ですが、2015年にアメリカでマラソンランナーの腸内細菌を調査したところ、ベイロネラ属の細菌(ファーミキューテス門)が座位の仕事をしている人々に比べて多いことが判明しました。更にベイロネラアティピカ菌と想定され、乳酸を唯一代謝する菌としての特徴がみられましたが、その後のマウスの研究で乳酸からプロピオン酸という短鎖脂肪酸を産生することがわかったのです。プロピオン酸は腸から吸収されて筋肉のエネルギー源になったり、その消炎効果により筋肉疲労を軽減したりする作用が考えられていることから、サルコペニアの予防にも効果のあることが期待されます。このプロピオン酸を増やすために、多く含むブルーチーズ(実はこの臭いの元がプロピオン酸)を食しても、大腸に届く前に消化液で分解されてしまいますので、効果はありませ。水溶性食物繊維を摂取して、運動をすることでベイロネラ属菌の持つ酵素が活性化して、プロピオン酸が多く作られるのです。日本でも同様の研究がなされ、長距離ランナーにバクテロイデス・ユニフォルミス菌が多いことが判明しました。この菌はトウモロコシを原料とした難消化性水溶性食物繊維を摂取すると増えることが知られております。また、これらの研究を元に、アメリカでも日本でもベンチャー企業がサプリメントを開発しています。サルコペニア予防にこれらサプリメントを試みるのも一案かと思います。

老化やアルツハイマー型認知症などの加齢に伴う病気の発症にはNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)というエネルギー代謝に必要な補酵素の低下が関連していると言われています。この前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は若返りのビタミンとも呼ばれ、これを摂取すると、高齢男性において筋力が改善するという研究結果が東大病院から発表されました。骨格筋量に有意な変化は認められませんでしたが、歩行速度や握力などの運動機能が向上し、サルコペニアの予防が期待される結果です。NAD+は加齢とともに減少し、50代では20代と比較して半減してしまいます。従って、外からの補給が必要なのですが、食事で摂るとなると、NAD+が比較的多く含まれるブロッコリーでも一日40㎏以上必要になるほどの量なため、サプリメントで摂ることをお勧めします。

最後に筋肉細胞におけるタンパク質同化の刺激因子に注目しますと、先に述べたロイシンという分岐鎖アミノ酸、運動、インスリン様成長因子(IGF-1)の3つが挙げられます。このうちIGF-1は筋サテライト細胞という骨格筋の幹細胞を刺激することで、筋肉細胞に分化、増殖させることが知られています。加齢とともにIGF-1は減少し、筋サテライト細胞はその数や機能が低下してきますので、IGF-1を十分に増やすことがサルコペニアを予防すると考えられています。また、最近ではIGF-1が筋肉細胞の肥大を促進することや、筋タンパク質の分解を抑えることも分かってきており、様々な面から、サルコペニアを予防する可能性を有しています。IGF-1は現在、医薬品やサプリメントではありません。しかし、IGF-1は幹細胞自身が作っているので、例えば、幹細胞を取り出して培養すると、その上澄みである上清液にIGF-1が多く含まれています。その上清液を筋肉注射や静脈内投与することにより、IGF-1が筋サテライト細胞を刺激し、その結果筋肉細胞を増加させるという再生医療が可能となります。現在は未承認医薬品ではありますが、現在既に、医師主導で行われ始めています。高い効果が出ることが期待されています。

分子栄養療法、再生治療について(犀星の杜クリニック六本木HPへ)

投稿者: みなと芝クリニック

2024.03.04更新

サルコペニアとは

サルコペニアは加齢によって筋肉の量が減少し、筋力と身体能力が低下した状態をいいます。加齢以外にも、閉じこもりの生活や病気、低栄養が原因で若い人にも起きる場合があります。 人間の筋肉量は20代を過ぎると10年間に男性は約2㎏、女性は約1㎏ずつ減っていくといわれ、75~79歳の男女の約2割、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアという研究結果もあります。 サルコペニアは寝たきりや要介護状態を引き起こす重大な要因であり、また糖尿病や肺炎など様々な病気を発症しやすくなり、更に死亡率が高くなることも分かってきました。 サルコペニアかどうかはまず、自分でできる簡単なセルフチェックでみることができます。サルコペニアは運動や食事など、生活を見直すことによって予防したり、改善が見込まれる疾患のため、自身の状態をチェックし、早めに対策を始めましょう。

サルコペニアの原因による分類

若い女性の5人に1人が「隠れ肥満」という事実
将来のサルコペニアの恐れ

19~23歳の女性の身体組成を調べた研究では、5人に1人が、見た目はスラっとしていても体全体に占める脂肪の割合が多い「隠れ肥満」(BMI25未満なのに、体脂肪率が30%を超える状態)と診断され、その中には骨格筋量が著しく少ない女性も数多くいました。こうした隠れ肥満は、運動不足になりがちな生活習慣や無理なダイエットなどが原因で起こります。いわゆる筋肉の脂肪化が生じており、サルコペニアにつながる危険因子となり得るので十分注意が必要です。

サルコペニアの症状
サルコペニアでは筋肉量の減少、筋力の低下、身体機能の低下によって、次のように様々な症状が現れます。ただ、意識をしないと気づかないことも多いため、定期的にサルコペニアのセルフチェックをしてみましょう。

●筋肉量の減少によるサルコペニアの症状・リスク

①体重減少
ヒトの体重の約40%は筋肉が占めているため、まず体重が減少します。しかし、筋肉量が減っても体脂肪が増えている場合、体重が増加することもありますので、注意が必要です。

②冷え性
筋肉量が減少すると、筋肉での熱産生が減少し冷え性になりやすくなります。

③熱中症・脱水
筋肉の成分の約75%は水分で体の水分の貯蔵庫といわれています。筋肉量が減少すると体内に蓄えられる水分量が減り、熱中症や脱水になりやすくなります。

④骨粗しょう症
筋肉量が減ると筋力が低下し、骨密度も低下します。骨粗しょう症の原因となることもあります。

⑤糖尿病
筋肉量が減ると筋肉で効率良くインスリンが作用しないインスリン抵抗性という状態になり、糖尿病を発症しやすくなります。

●筋力の低下によるサルコペニアの症状・リスク

①立ち上がるのが困難
下肢の筋力が低下すると、いすから立ち上がる時に何かにつかまらないと難しくなります。

②力を入れる作業ができない
握力が低下すると、ペットボトルのふたや缶のプルタブなどを開けるのが難しくなります。

③疲れやすい
日常生活には一定以上の筋力が必要なので、筋力低下により、最大筋力に近い力が常に必要となり、疲れやすくなります。

④バランスが悪い・転びやすい
筋力低下により立っている時や歩行時のバランス能力が低下します。片足立ちできる時間が1分に満たない場合は要注意です。

●身体機能の低下によるサルコペニアの症状・リスク

①横断歩道を渡り切れない

歩行者用の信号の多くは毎秒1mの歩行速度で渡り切れるように設定されているため、筋力が低下して歩行速度が落ちると青信号のうちに渡り切れなくなります。

②階段昇降が難しい
階段の上り下りがつらくなります。

③閉じこもりがちになる
疲れて外出するのが面倒になり、外出しなくなると身体機能はさらに低下し、閉じこもりがちになるという悪循環に陥ります。

サルコペニア(筋肉減少症)の対策
サルコペニアのリスクは、セルフチェックで簡易的に調べることができます。次の(1)~(3)の3つのセルフチェックで2項目以上該当した場合は、サルコペニアの可能性が高いと判断できます。

(1)指輪っかテスト
①両手の親指と人差し指で輪を作ります

②利き足でないほうのふくらはぎの一番太い部分を、力を入れずに軽く囲んでみます。

指輪っかでふくらはぎが囲めてしまう人は、サルコペニアの有病率や新規発症リスクが高いことが分かっています。

(2)開眼立脚位テスト
①素足で、滑りにくい床に立ち、両手を腰に当てます。
②立ちやすい側の足で立ち、もう一方の足を床から5cmほど上げ、立っていられる時間を計測します。
→立っていられる時間が8秒未満の場合はサルコペニアの可能性があります。

 

(3)5回立ち座りテスト
①ひじ掛けのないいすに座り、両手を交差して胸に当て、足は肩幅程度に開きます。
②いすに座った状態から、反復して立ち座り動作を5回繰り返す。かかった時間を計測します。
5回立ち座りする動作が12秒以上かかった場合はサルコペニアの可能性があります。

サルコペニアは当院のような整形外科と内科を専門としている外来で、安心して診療を受けられます。
当院ではサルコペニアは、内科的、整形外科的な目で診られるサルコペニア専門外来で、主に高齢者(65歳以上)を対象に診療を行っています。サルコペニアの診断はアジア・サルコペニア・ワーキンググループが公表しているアジア人の握力は男性で28kg未満、女性で18kg未満、歩行速度は1秒間あたり1m未満が基準となり、握力か歩行速度のいずれかが値を下回る場合で、さらに四肢骨格筋量が低下している場合、サルコペニアと診断されます。四肢骨格筋量の低下は、正確には病院での特殊な検査機器を用いての測定が必要ですが、無い医療機関でも指輪っかテストや、下腿周囲長の低下の基準(男性34cm未満、女性33cm未満)を代用しています。
しかし、実際はサルコペニアの診断基準を満たした時点では既に進行して手遅れに近い状態もありますので、もっと早期にサルコペニアを疑うことができれば、対策がより有効である可能性があります。

当院の 寝たきり(サルコペニア)予防外来 はこちら

分子栄養療法について(犀星の杜クリニック六本木HPへ)

投稿者: みなと芝クリニック

2024.03.04更新

コラムサルコペニア

サルコペニアの超早期発見と運動対策
サルコペニアとは加齢に伴う筋力あるいは筋肉量の減少を指す言葉です。この状態を放置しておくと、寝たきりや認知症になる恐れが高いですので、早期発見による予防が大切となります。最近ではコロナ禍の影響により、外出する機会が減ったことで40代ぐらいの若い世代にも増えていると言われています。決して、高齢者だけの病態ではありませんので、油断してはいけません。

早期発見は“股関節の痛み”
筋力低下が股関節に負担をかける
股関節は、日常的な動作のほとんどに関係する大切な関節です。歩くこと、階段を上り下りすること、イスから立ったり座ったりすることは、股関節が可動することで円滑に行えるのです。
ゴルフや野球などのスイングをする場合も、腰の動きをスムースに行うためには、基本となるのは股関節です。また、股関節が傷んでいると、腰に負担がかかり腰痛の原因にもなります。しかし、この股関節は加齢とともに動きが悪くなっていきます。その理由は、次の二つが考えられます。

①股関節周辺の筋肉が硬くなる
②股関節を支える筋肉が弱る

この結果、股関節にかかる負担が大きくなり、日常の動作や歩行に支障を来すようになります。そして、筋力低下が目立ってきますと、更に股関節に痛みを感じるようになります。若いときは、筋肉が股関節をしっかりサポートしてくれるので、仮に股関節が多少傷んでいてもあまり影響は出ませんが、ある程度の年齢になると、運動不足も加わって筋力が弱まってくるので、歩いているときに足がふらつくようになります。歩行を安定させるために股関節で支えようと負担をかけてしまい、次第に痛みが発生してくるのです。また、年齢を重ねると、どうしても大腿骨の骨密度が低下し脆くなってきますので、歩き方にもブレが生じ、更に股関節に悪影響を及ぼします。その結果、違和感や痛みが現れやすくなるのです。なんとか我慢できるうちはよくても、限界に達すると歩けなくなってきます。深刻化すると最悪の場合、人工関節に交換する手術を受けざるをえなくなることもあります。この状態を脱するためには、股関節周囲の筋力をアップするほかありません。股関節を支えている筋にはアウターマッスル(表層筋)とインナーマッスル(深層筋)があります。アウターマッスルには股関節を外転する筋と内転する筋、そして伸展する筋があります。外転筋は、股関節を外側に開く、つまり、足を開くための筋肉です。お尻の中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋などがそれに当たります。一方、内転筋は、股関節を内側に閉じる(足を閉じる)ための筋肉です。これには、大内転筋、短内転筋、長内転筋などが含まれます。従って股関節は、外転筋と内転筋を鍛えるだけでも、支える力をかなり補強することができます。そして、股関節を伸展する大殿筋、大腿二頭筋(いわゆるハムストリング)は股関節と大腿をしっかり安定させる筋で、股関節のぐらつきを防止します。これらアウターマッスルの筋力低下は日常生活の中で自覚しやすいので、歩行、立ち上がりや階段の昇降に違和感を感じた時は、「8の字タオル体操」という運動法を皆さんにお勧めします。

「8の字タオル体操」のやり方
まずは、そのやり方を説明しましょう。用意する物は、バスタオル1枚だけです。
肩幅くらいに足を開いてイスに座ります。バスタオルをたてに折りたたんで、両ひざの近くで8の字になるように巻きつけます。

次にタオルが交差した部分を両手でしっかり握り。握ったこぶしを挟むように両ひざを内側へ思い切りギューッと3秒ほど押しつけます。その後、一度力を抜いてから、今度はタオルを握ったまま、外へ思い切りグーッと3秒ほど広げるようにします。この間は呼吸を止めず、有酸素で行います。内→外→内→外という動きを、30回くらいくり返し、これを1セットとして、朝昼晩とそれぞれ1セットずつ行うと効果的です。ちなみに、この体操は、やり過ぎはかえってよくありませんので、1セットで行うのは、せいぜい30回以内に留めておきましょう。

股関節への負担が軽減し痛みが改善する!
8の字タオル体操は、若年者だけでなく、ある程度の高齢のかたでも、楽にでき、有効に外転筋や内転筋を強化することができるのです。特に外転筋のうち、大腿筋膜張筋などは、なかなか鍛えにくいものですが、この8の字タオル体操なら、効果的に鍛えることができます。一方、伸展筋である大殿筋や大腿二頭筋は次に示すスクワットやブリッジという体操を根気よく続けることによって、筋力が増せば、歩いているときのブレが少なくなり、股関節への負担が軽減されてきます。股関節周囲の筋肉を鍛えることにより、股関節痛の予防や改善につながり、その結果、運動量が増え筋力が向上するという好循環になります。、股関節に違和感を覚えたならば、そのまま放置せず、まず8の字タオル体操を試みましょう。スクワットは道具もいらず、自宅で手軽にできる運動です。一日10回から20回を1セットとし、少なくても2セットは毎日し続けると一か月ほどで効果が表れます。

スクワット
足を腰幅に開き、つま先は膝と同じ向きにする
お尻を後ろへ突き出すように、股関節から折り曲げる
太ももが床と平行になるまで下ろしたら、ゆっくりと元の姿勢に戻る
1セット、10回程度、1日2セットを行います。もちろん有酸素で行います。


膝がつま先よりも前に出ないよう注意します。負担が大きい時は椅子を利用しても良いです。

ヒップリフト
両腕は、身体の横で手のひらを下にして伸ばし、膝を曲げて仰向けに寝ます。
お尻(大殿筋)と太腿の後ろ(ハムストリングス)に力を入れて、腰を浮かせていきます。
肩から膝までが一直線になる位置まで腰を浮かせたら、その姿勢を5秒間キープします。この運動も有酸素で行います。
その後、大殿筋とハムストリングスに力を入れたまま、ゆっくりと腰を下ろしていきます。
お尻が床につく直前まで下ろしたら、再びそこから腰を浮かせていきます。
以上の動作を5~10回程度反復します。1日、午前・午後で2セット程度行います。
一方、インナーマッスル(深層筋)には股関節の外旋を担う深層外旋六筋というものがあります。骨盤の前面にある梨状筋、外閉鎖筋、後面にある大腿方形筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋があります。これらの深層外旋六筋が弱まると、歩行時の足の着地(片足)の際に「膝が内側に入る(内股)」(ニーイン・トゥーアウト)になり、膝を痛める結果を招きます。長距離を走るランナーの方の場合、膝の内側が痛くなる鵞足炎が有名です。その他に重要なのが腸腰筋です。腸腰筋は大腰筋と小腰筋、腸骨筋の3つから構成される筋肉であります。腰椎から骨盤、大腿骨にかけて付着する筋肉で、股関節を曲げたり背骨を安定させたりする働きがあります。腸腰筋の筋力が低下すると、体幹が不安定になり、姿勢が悪くなり腰痛が出やすくなることもあります。サルコペニアの初期には大腰筋が萎縮することが知られており、CT検査で診断することができます。インナーマッスルは従来の筋肉トレーニングで鍛えることが難しく、以下に示すようなトレーニング、あるいはピラティスが有効とされています。

レッグランジ 
腸腰筋、主に大腰筋のストレッチと筋力増強効果があります。
しゃがんだ状態から、膝は曲げたまま、足を前後に開きます。
後足の膝は床につけます。
前足に体重を乗せ、後足の股関節を伸ばします。
左右10回ずつ 一日2セット行います。


股関節を45〜60度程度曲げた横向きの姿勢.
お臍が真横を向くように(骨盤が回らないように)しましょう.
上側の股関節を開くようにして股関節の外旋運動を行います.
10回を2セット程度行います。注意点としては骨盤が動かないようにします。
骨盤が動いてしまうと、体幹の回旋運動が伴ってしまい,効果が十分に出ないようです。

当院の 寝たきり(サルコペニア)予防外来 はこちら

投稿者: みなと芝クリニック

2023.05.31更新

COVID-19外来始めました

令和5年5月8日の新型コロナの5類変更に伴い、当院も本格的に新型コロナ感染症を含めた発熱患者さん対応の外来を開始しました。実は5月15日より、新型コロナ診断キットの新たな開発に参画しておりまして、患者さんのご協力を仰いでいる次第です。詳しくはホームページを参照ください。ご協力いただいたお礼も準備しております。また、新型コロナ治療薬であるゾコーバやバキロビットの処方もいたしております。やはり、服薬した方が体が楽ですし、なにより周りの人に移さない効果が期待できるので、有難いと思います。火曜、木曜、金曜の午後の外来と第一、三、五金曜の午前の外来で行っております。通常の診察と検査代が4,000円ちょっとかかりますが、謝礼が3,000円相当ですので、元は取れる感じです。症例ご協力、宜しくお願いします。
名誉院長 川本徹

投稿者: みなと芝クリニック

2021.01.26更新

オゾン除菌・脱臭器の設置

当院では今週より、ウィルス、及び細菌に対する感染対策の一環として、オゾン除菌・脱臭器(エアーバスター)を院内に設置しました。奈良県立医科大学の研究ではウィルスの活性を最大1万分の1まで不活化することが証明されております。人体への安全性は確認されています。救急車内にも設置されて、救急隊員の安全を保障しているそうです。密な待合室、診察室、処置室の感染対策に威力を発揮しますので、どうぞ安心して受診してください。

投稿者: みなと芝クリニック

2020.05.17更新

新型コロナ感染対策(4)

まだまだ予断を許さないコロナですが、以前、コロナ感染対策でカモスタットという膵炎の薬が感染予防に役立つ可能性を記載しました。その後もいろいろな研究結果が出され、その中で興味深いものをピックアップしてみました。一つはイタリアの研究者が論文で発表した、抗アンドロゲン薬によるコロナ感染予防の話です。抗アンドロゲン薬は主に前立腺がんの治療に使用される薬物ですが、いわゆる男性ホルモンを抑えることにより、前立腺がんの進行を遅らせる作用があります。この薬で治療していた男性患者さんはしていない男性患者さんと比較して、罹患率や重症化率が低いという結果がでたのです。抗アンドロゲン薬はコロナウィルスが細胞内に侵入する時に必要なTMPRSS2という酵素の発現を減らすことにより感染を抑えるのではないかと考えられています。すなわちアンドロゲンの量を抑えるという理屈であれば、前立腺肥大症の治療薬で男性ホルモンを減らすタイプの薬がもしかしたら有効かもしれません。もう一つは、日本の研究者が見出したのですが、セファランチンという脱毛症や白血球減少症の治療に使用される薬で、コロナウィルスが細胞と付着する際に必要なスパイクタンパクに先に付着することにより、ウィルスが細胞に付かない、つまり感染を起こさせないというメカニズムが考えられています。これらの薬物は保険適応外ですが、既存の疾患に使われている薬なので、それらの安全性や副作用は分かっています。基礎疾患のある方や高齢の方には、まずコロナに罹らないということが大事なので、このような薬の予防効果というものに期待したいものです。

投稿者: みなと芝クリニック

2020.05.15更新

おかげさまで10周年になりました。

おはようございます。2020年5月15日はみなと芝クリニックが開院して、ちょうど10年経ちました。ここまで無事に続けられたのも、一重に受診していただきました患者さん、看護師、医療事務員、MS法人の事務、税理士さん、弁護士さん、大家さん、そして家族のおかげです。ここにあらためて感謝を申し上げます。今年はコロナでお祝いどころではありませんが、心の中でしみじみと10年を振り返って、頑張ってきた自分にもご褒美をあげたい気持ちです。まだまだみなと芝クリニックは進化し続けていきますので、これからもどうぞ宜しくお願い致します。

投稿者: みなと芝クリニック

2020.04.20更新

喫煙と新型コロナウイルス感染症

喫煙と新型コロナウイルス感染症リスクとの関連性は、まだエビデンスが少ないこともあり、結論付けることは時期尚早と思われますが、現在までにどのように議論されているか調べてみました。中国で1099人という大規模な患者さんを対象にした研究によりますと、新型コロナウイルス感染症が重症化した患者さんの割合は非喫煙者では14%であるのに対し、喫煙者では24%と1.7倍高いデータが示されました。また、同じく中国の武漢市の医療機関からの報告によりますと、喫煙歴のある人とない人では重症化するオッズ比が14.285、すなわち前者が約14倍重症化するリスクがあるという結果でした。実際、たばこを吸っていた患者さんが肺の手術で切除された肺の組織を用いた研究では、肺胞細胞に新型コロナウイルスが付きやすくなるACE2受容体タンパクが多数発現していることが確認されました。喫煙者は新型コロナウイルスに罹りやすいことが示唆されたのです。これらの結果を踏まえ、日本禁煙学会は禁煙することで感染のリスクや重症化のリスクは低減し、やがて非喫煙者と同等になるとコメントしています。今からでも遅くありませんので、早急に禁煙治療をすることを勧めます。

投稿者: みなと芝クリニック

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