2015.01.26更新
線維化マーカー
いきなりタイトルが「線維化マーカー」となっていますが、線維化とは炎症によって引き起こされる線維芽細胞が増生し、組織が硬くなることをいいます。線維化の代表は「肝硬変」です。肝細胞がウィルスやアルコールなどによって炎症性に壊されると、そこに線維芽細胞が集まってきて組織を修復します。通常は炎症が治まれば線維化は消失しますが、持続的な炎症があると線維化した組織は不可逆性となり治らなくなります。最近線維化の程度を血液検査で鋭敏に感知できるようになってきました(保険外)。先日、日本とタイの研究者が集い、肝内胆管癌のバイオマーカー開発に関する国際プロジェクトのミーティングが東京であり、参加してきました。そこでは癌の発生は組織の線維化が関連しているという報告があり、その線維化を追っていけば癌の早期発見に繋がるだろうという内容でした。タイは寄生虫感染で胆管に慢性炎症が生じ、約20年ぐらいで胆管に癌が発生することが疫学的に証明されています。彼らは現在、胆管の線維化をエコーで追跡していますが、この線維化マーカーを合わせれば更に診断率が向上し、早期発見に繋がるだろうと予想しています。タイで早くこの検査ができるように日本がバックアップしていくことが重要です。本来の国際協力のあるべき姿だと思います。
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2015.01.06更新
恩師の言葉
明けましておめでとうございます。皆様におかれましては良い年を迎えられたことと思います。当クリニックも移転リニューアルしましたので、心機一転頑張りたいと思います。本年もご支援宜しくお願いいたします。さて、新年を迎えますと今年の抱負なり、目標を掲げて参りますが、私は学生時代に恩師からいただいた言葉を挙げたいと思います。「知識は使わなければだめだ」これは医学部6年生と研修医の先輩がいる目の前で、クラブの顧問の教授が述べた言葉です。医学部時代は国家試験のため、医学知識をできるだけ詰め込みます。特に筑波大学は新設校であるため、国家試験に力を入れており合格率も毎年トップクラスにいます。しかし、弊害も問題になっていまして、いわゆる詰め込み教育の結果、考えて問題を解決する能力が養われない医者が育ってしまう恐れがあります。知識は使ってみて始めて、経験となりその積み重ねで、どんな状況でも解決できるようになるのです。我々の領域で知識を使うということは、多くの患者さんを丁寧に診療すること、すなわちいかに一人の患者さんから多くの情報を得て診断につなげていくかということです。知識を積み重ねて患者さんを診るの繰り返しです。私も卒業して28年目になりますが、この言葉を肝に銘じ精進していく所存です。
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2014.12.27更新
お屠蘇
屠蘇とは「邪気を屠(ほふ)り、心身を蘇(よみがえ)らせる」という意味だそうです。お屠蘇酒を飲み、1年の健康を祈願する習わしは平安時代に誕生したそうです。正月におとそを飲むことは知っていましたが、単にお酒を飲むだけと思ってました。しかし、先日下の薬局で「屠蘇散」なるものを発見しよく調べたところ、漢方をお酒や味りんに漬け込み飲むのが正統だそうです。屠蘇散はオケラの根(白朮)・サンショウの実(蜀椒)・ボウフウの根(防風)・キキョウの根(桔梗)・ニッケイの樹皮(桂皮)・ミカンの皮(陳皮)などを煎じたもので、身体を温めたり、胃腸の働きを助けたり、風邪の予防に効果的といわれる成分が含まれます。これを飲めば1年寿命が延びると考えらえてきました。早速、これをいただき正月に飲用してみようかと思います。漢方は当院でも処方しておりますので(屠蘇散は別)、どうぞご相談ください。
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2014.12.19更新
トリガーポイント注射
今年5月より整形外科を標榜していますが、当院ではトリガーポイント注射を積極的に行っています。トリガーポイントってご存知ですか?主に筋肉やスジ、靭帯や腱の痛みの強い場所を指します。痛みの原因は様々でも筋肉やその周辺の炎症や血流障害が大元にありますので、局所麻酔薬を注射することにより筋肉を緩め、血流改善を図って痛みを軽減して治癒に至らしめるのです。局所麻酔薬の副作用はほとんどありません。痛みは数日コントロールできることが多いですが、薬の作用は1日ぐらいで消失します。何回注射しても基本的には大丈夫です。ペインクリニックとして保険診療ですので安心して施術を受けられます。慢性の肩こりや膝関節痛の方にも効きますので、是非当院にご相談してみてください。
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2014.12.12更新
移転その後
移転から既に10日が経ちました。移転に伴う手続きやクリニック内の整理などまだまだ落ち着きません。患者様には大変ご迷惑をお掛けしています。このばたついている中、移転前と同じペースで診療を滞ることなく行うということは想像以上に大変です。スタッフの協力が無いと不可能です。あらためて、スタッフの存在に敬意を表したいと思います。通常のペースに落ち着くまでにもう少々お時間をいただけますようお願い申し上げます。更に医療事務のスタッフの一人が今月で退職しますので、代わりの人を探すのに苦労しています。未だに見つからないのであせっています。もし皆様のお知り合いで医療事務の仕事を探していらっしゃる方がいれば、ご紹介していただけますと有難いです。
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2014.12.05更新
ネパール人医師
12月1日に筑波大学大学院同期のネパール人ドクターと再会しました。1992年に修了して以来ですから、22年振りですね。彼の日本語は少しも色褪せていなく素晴らしいものでした。現在はニュージーランドでクリニックを開業しています。クリニックには複数のドクターが登録されていて、彼は内科外科を診療しているそうです。クリニック全体の登録患者数は1万8千人だそうです。かかりつけ医制度がしっかりしているので、患者さんは紹介が無い限り最初はクリニックを受診します。もちろん、内科医は4人いるそうなので、全員彼にかかるわけではありませんが、患者さんが指定してくるので、丁寧な診察をすれば指名が多くなるそうです。折しも安倍総理が外国人医師を特区に誘致する話があったので、その話をしましたところ、大変興味を持っていました。もしかしたら、将来共同でやらないかとも言ってました。外国人旅行客やビジネスマンが増加していることを考えますとタイムリーな話かなと前向きに考えています。
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2014.11.27更新
その3
また、2010年から3年間、東京大学医科学研究所の村上善則教授が研究代表者となった「(タイにおける)肝吸虫感染による胆道癌の制御を目指す研究」の研究分担者として任命されました。私の研究分担は今まで続けて参りました胆道癌の発生・進展に関わる分子を解明するとともに、その分子を標的とした治療法の開発です。タイは周知の通り、肝吸虫感染が原因となる肝内胆管癌が多く、癌の発生・進展のメカニズムを解明する良きヒトのモデルと考えられます。現在、少しずつですが分子が明らかとなり、それら分子を標的とした動物実験が進んでおります。将来は動物実験の結果をもとにタイにおける肝内胆管癌の予防や治療に関連したプロジェクトを立ち上げることを目指して行きたいと考えております。
そして最後に開業医と研究者という2足のわらじの自分を心身ともに支えてくれる妻に感謝の気持ちを捧げます。
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2014.11.27更新
その2
筑波大学消化器外科在籍中の2003年にErbB2トランスジェニックマウスを開発した上記研究所に留学して、マウス胆嚢癌を初めて目にしました。形態的にはポリープから発生する癌と過形成上皮から発生する癌の二通りがあり、癌の発生から進展までの形態変化が観察できることに興奮したことを覚えています。また、ヒトの胆嚢癌と非常に似た形態、進展を示すことから、ヒト胆嚢癌のモデルとしても応用できる可能性が示唆されました。しかし、ヒト胆嚢癌との形態的類似性は研究室のスタッフには理解されず、英文論文にしてもその重要性は認識されにくいと考え、胆道に投稿したのが今回の受賞論文でした。
米国の研究室ではヒト胆道癌に対する分子標的治療法の開発研究を、ErbB2トランスジェニックマウスを用いて行なっていました。ErbB2のシグナル伝達系に関与する分子を標的とした様々な抗体や受容体拮抗剤などを駆使し、それらの生物学的効果を、本マウスを用いて検討するものでした。帰国後は既にポジションはありませんでしたが、米国での研究を継続するために、共同研究者である筑波大学消化器内科の正田純一先生の研究室に出入りさせていただいたことは大変幸運でした。しかも、当時は研究費が全くない時でしたので、本賞受賞の知らせがあった時は大変勇気付けられました。
更に幸運なことに2008年には筑波大学の大先輩である東京女子医科大学消化器外科の山本雅一教授から非常勤講師として研究に従事する機会を与えていただき、飛躍的に研究が進みました。研究成果はJDDWおよび胆道学会総会のワークショップに採用される機会に恵まれ、「胆と膵」や「肝胆膵」から4件の原稿依頼が来ました。英文原著論文も筆頭著者として2編出すことが出来ました。共同研究者の先生方々にこの誌面を通して改めて感謝を申し上げます。
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2014.11.27更新
日本胆道学会50周年記念誌
この度、タイトル記念誌が発行されることになり、学会賞受賞者も寄稿することになりました。私は米国留学中にこの学会賞に論文が選ばれ、帰国後に表彰を受けました。今回はその時の寄稿した原稿を紹介したいと思います。少々長いので3回に分けます。自分の今までの研究に対する思いや感謝の気持ちを書きました。
「胆道一途」
東京女子医科大学消化器外科非常勤講師
東邦大学医学部客員講師
みなと芝クリニック院長 川本 徹
私は2005年の「胆嚢発癌におけるErbB2トランスジェニックマウス胆嚢癌を用いた検討」論文でこの名誉ある本学会賞を受賞することができました。MDアンダーソン癌センターサイエンスパークで行なった研究成果を報告した内容でした。受賞式は折しも帰国して間もない10月の仙台の総会時で、大変感慨深いものがあり、当時のことは鮮明に記憶しています。
そもそも胆道癌の研究を始めたのは、私が所属していた筑波大学消化器外科の初代教授である故岩崎洋治先生が胆道癌の外科治療を専門としていたため、大学院での研究テーマが胆道癌の臨床病理だったからです。私は当時、「胃癌の構造」で知られていた中村恭一先生率いる病理学研究室に派遣され、主に消化管病理の基礎をみっちり仕込まれました。その中で、胃癌や大腸癌と比較して、胆道癌との組織形態および進展様式の共通性や特異性などについて多くの症例を解析しました。その時の研究成果の一部は私の学位論文となり、「胆道」に掲載していただきました(肝門部胆管癌の肝臓側胆管における進展様式の検討 胆道10(2)131-137 1996)。
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2014.11.10更新
銀杏中毒
11月8日の土曜に救急外来で、銀杏60個を一気に食べたあとめまいと嘔気があるという患者さんから連絡がありました。銀杏の食べ過ぎによる吐き気と単純に思って受け入れたのですが、外来の看護師が「銀杏は中毒を起こすから怖いですよね」と言ったので、急いで調べましたら古くから中毒を起こすことで有名だったのです。戦後の食糧難の時代にはよく見られたそうです。小児では7個から中毒症状が出ることがあるそうです。成人では40個以上は避けた方がいいようです。症状は嘔吐、めまいが最初にあり、進行するとけいれんや呼吸困難に陥り、まれに死に至るそうです。今回も油断して患者さんを帰宅させる所でした。銀杏の毒素は3時間毎に腸肝循環するので、24時間は経過観察が必要だそうです。幸いこの患者さんは軽症で済みました。私は銀杏が結構好きなので、40個くらいは平気にいけちゃう気がします。これからは鍋やおでんの季節ですのでみなさんも注意してください。
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