クリニックブログ

2015.04.10更新

やっと念願がかないました

パーツツマブという分子標的治療薬を用いた胆道癌に対する新しい治療法の開発は私の長年の夢でした。今まで日本消化器病学会や日本胆道学会、および国際学会で数多く発表して参りましたが、この度やっと学会誌にパブリッシュされました。オンラインジャーナルには既に出ていましたが、印刷物として世に出ることになりました。これをステップとしてヒトへの臨床研究に弾みがつくことを願って止みません。Journal of Gastroenterology (2015) Volume 50 Number 4: 467-479

投稿者: みなと芝クリニック

2015.04.02更新

身震いする言葉

様々な人生の場面で、感動のあまり身震いするようなことはありませんか。昨日、ある番組で難病治療に取り組む山中先生の言葉に大変感動しました。「私たち(研究者)の1日、1ヶ月と患者さんの1日、1ヶ月は違うことを認識して、研究をしていかなければならない」難病で苦しんでいる患者さんのために、1分、1秒を無駄にすることなく、医療や研究に勤しむという信念を感じる言葉です。iPS治療の開発に対する熱い情熱がひしひし伝わります。自分も一医療者として、一研究者として同じを想いを感じますので、この言葉を聞いた瞬間、身震いしました。と同時に自分はどれだけのことをしているのか、見つめ直す機会を得ました。この言葉を糧にこれからの自分の医療や研究を進めて行きたいと思います。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.03.30更新

日本人に多い癌

先日、2011年の癌統計が発表され、話題となっております。男性は1位が胃癌、2位が前立腺癌、3位肺癌で、女性は1位が乳癌、2位が大腸癌、3位が胃癌でした。男性の前立腺癌が2位に入ってきたのは驚きでした。米国では多く、その予防や治療法の研究に多額の研究費が組まれています。原因が生活習慣に関わっているかどうかよくわかっていないのが現状ですので、例えばピロリ菌を除菌したり、禁煙したりする予防策もないようです。今のところ早期発見、早期治療しかありません。前立腺は高齢者では場合によっては不用になりますので、乳癌の場合と同様に遺伝子解析の結果で、癌になる前に取ってしまうようなことが将来的にはあり得るかもしれません。しかし、前立腺癌は潜伏癌である場合もありますので、最後まで症状がでない。腫瘍マーカーとしてはPSAがありますが、感度的な問題もあり絶対的なものでもないようです。今後、日本人の意識も変わり、前立腺の研究者が増えていくことに期待したいと思います。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.03.19更新

最近の腸内細菌事情

先日、腸内細菌をテーマにNHKが特集をしていました。当院でも以前よりアレルギー患者さんや過敏性腸症候群の方に乳酸菌が症状改善に有効であると経験的にわかっていました。それがより科学的に実証されつつあるのです。特に日和見菌であるバクテロイデス属の菌に糖尿病や肥満を予防する効果があるそうです。バクテロイデス属の菌の中には大腸癌のハイリスクがあるという説もあるので、同属でも善玉と悪玉が混在しているようです。善玉のバクテロイデスを増やすためにはポリフェノール(ブルーベリーなど)、βグルカン(大麦など)、食物繊維(ごぼうなど)を摂ることをお勧めします。甘味料はオリゴ糖がベストのようです。これらに特化したサプリメントもあります。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の患者さんでは健常なヒトの便移植をすると劇的に効果があるという話もあります。自分の腸内細菌の様子を知っておくことは健康を維持するために重要だなと改めて考え直した次第です。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.03.14更新

ピロリ菌除菌

ピロリ菌感染が胃潰瘍や胃癌の原因と成り得ることが広く一般に知れ渡るようになり、健診や人間ドックでピロリ菌感染も調べられるようになってきました。それとともに除菌を希望される患者さんが多くなっております。健診後の診察で除菌を勧められるようです。除菌は胃酸の分泌を抑える薬と抗生物質2種類を1週間内服するだけの治療ですが、保険適用で治療する場合は事前の胃内視鏡検査が必須となります。この点をあまりご存知ない患者さんがおられるようで、バリウムの検査で異常なしといわれているから内視鏡する必要がないのではと仰る方が後を絶ちません。確かに異常はないと思いますが、除菌適応の条件にピロリ菌感染症に加えて慢性胃炎があることと書いてあります。慢性胃炎はよっぽど進行していればある程度バリウム検査でも診断できますが、軽微なものでは内視鏡検査で診断します。ペプシノーゲン法という血液検査でも診断できますが、胃炎の範囲をみることは不可能です。もし、胃粘膜に異常があれば細胞を採取して検査することも可能です。すなわち、病変の見落としを少なくするのが目的です。従って、胃内視鏡を行うことが大事なのです。健診で内視鏡をされた方では、概ね半年は結果が有効ですので、検査日がわかれば除菌治療を保険診療で行うことができます。ピロリ菌感染は放置していた時のデメリットが大きいと思いますので、是非除菌をお勧めします。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.03.12更新

インスリン様成長因子

先日、元同僚の鈴木君が長年かかって論文を出しました。内容はインスリン様成長因子が胆道癌細胞から分泌されていること、そしてその発現量が予後と相関しているということです。この因子は他の癌細胞ではかなり解析されており、抗がん剤として受容体の阻害剤の開発が進んでいますが、胆道癌で本因子の発現を証明した研究は希少ですので、大変価値のある論文です。手前味噌ですが私も共著者とさせていただきました。本因子をターゲットとしたいわゆる分子標的治療薬は、他の分子標的治療薬で賄いきれない領域をカバーすることが期待されます。副作用としてはインスリン様分子の働きを阻害するため、糖尿病の状態になる恐れがあります。高血糖の状態は癌の治療にも影響しますので、対策としてはSGLT2阻害剤のような血糖を下げる薬を併用するといいのではないかと考えています。いずれにしても今後の研究開発に期待したいと思います。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.03.05更新

論文査読

大学の非常勤講師や学会の評議員をしていますと、学会誌の投稿論文の査読を依頼されたり、意見を求められることがあります。最近思うのですが、研究方法は高度であるにも関わらず、考察や結論に至る根拠が実験データを基にするのではなく、他人の論文の引用だけで済ましたり、単に推測だけにとどめ今後の研究に期待するなどで終わっている論文が多いような気がします。恐らく研究を始める段階でとりあえずやってみて、結果が出てから考えればいいということなのでしょう。ですから結果が出てから結論につじつまを合わせるような考察をしてしまうのです。通常は研究計画の段階である結論を導きたいと考えた時に、どのようなデータが必要であり、そのためにどのような実験を行うかをシミュレーションします。研究は発想の次にこの段階が重要で、いろいろ論文を読んで検討します。質よりも量を重視した最近の傾向の弊害と思われます。多くの論文を出せば点数が上がり出世できるという風潮がある以上仕方ないのかも知れませんが、やはり指導者がきちんと若い研究者を指導するべきです。学位論文もコピペという話もありました。インターネットにより若い人の情報収集能力は向上しましたが、考える力が衰えているという報告もあります。私と同世代はそろそろ教授や指導者の立場にある人が多いと思います。我々がしっかりと責任を自覚していかなければならないと思います。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.02.20更新

ふん便移植

最近、オランダの研究グループから、偽膜性腸炎の患者さんに健康な人の便の腸内細菌を注入したところ病気が改善したという報告がありました。偽膜性腸炎は抗生物質の過剰投与などで腸内細菌叢が変化し、クロストリジウム ディフィシルという嫌気性菌が増殖して発症します。他の抗生物質に抵抗性があり、難治性で時に致命的になります。バンコマイシンという抗生物質が特効薬でしたが、近年、耐性菌もあると言われています。日本ではこの治療を潰瘍性大腸炎の患者さんに応用しようという動きがあります。潰瘍性大腸炎も腸内細菌叢の異常により発症すると考えられている部分がありますので、効果が期待できるそうです。私は過敏性腸症候群の患者さんにもいいのではないかと考えています。現在のところ、乳酸菌などの善玉腸内細菌を大量に補充することにより対応していますが、難点は時間がかかることです。悪玉菌を駆除するという観点からすると、大腸癌の予防にも使えるのではないかと考えます。いずれにしてもどのような腸内細菌のアンバラスが疾病と関係しているのかを明確にする必要があるでしょう。腸内細菌叢の検査は保険が効きませんが、約3万円で網羅的に知ることが可能です。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.02.06更新

糖尿病新薬

昨年の5月頃に糖尿病の新薬が発売されました。それから半年を経過して、その効能や副作用が報告され安全性が確認されてきています。新薬の総称はSGLT2阻害剤といい、腎臓での糖の再吸収を抑制し、尿に余分な糖を排出させることにより糖尿病を改善する薬です。最近の研究でどういった患者さんに適しているかが明確になってきました。•比較的若年で罹患期間が短い患者(インスリン分泌能が保たれている)•肥満傾向(水太り)•他の糖尿病薬では不十分なときの上乗せです。この薬を服用するとかなり体重が減ります(4-5kg)。私は治療薬というより、予防薬として有用ではないかと思いますが、残念ながら予備軍に対しては保険適応がありません。今年の5月より長期処方が解禁となりますが、それまでは2週間処方です。ダイエットしているのに今一つ体重が減らない、ヘモグロビンA1cの数値が7よりなかなか下がらないということでお困りの方はこの薬の内服をお勧めします。

投稿者: みなと芝クリニック

2015.01.27更新

糖尿病新薬

昨年の5月に新しい糖尿病の薬が発売されました。SGLT2という腎臓で糖の再吸収を担うたんぱく質の働きを阻害する作用のある薬です。販売から約半年が経ち、そろそろ評価もある程度定まってきました。余分な糖が尿から出るときに尿の量も増えますので、まず体重が数キロ減少します。血糖値が低下するだけではなく、体重も減少しますので一石二鳥な薬です。インスリンに依存しませんので、単独では低血糖にはならないそうです。副作用としては尿量が増えて脱水傾向になりますので、尿路感染症や脳梗塞などになることがあります。しかしながら、水分をしいかり補充できれば問題はありません。糖尿病に罹ってまだ日が浅く、若年で何してもやせない小太りの方に適している思います。健康診断や人間ドックでメタボといわれた方にお勧めだと思います。

投稿者: みなと芝クリニック


SEARCH



CATEGORY

  • Clinic Blog
  • Contact Form
  • みなと芝クリニック 女性サポート外来