クリニックブログ

2024.03.04

サルコペニアとは

サルコペニアは加齢によって筋肉の量が減少し、筋力と身体能力が低下した状態をいいます。加齢以外にも、閉じこもりの生活や病気、低栄養が原因で若い人にも起きる場合があります。 人間の筋肉量は20代を過ぎると10年間に男性は約2㎏、女性は約1㎏ずつ減っていくといわれ、75~79歳の男女の約2割、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアという研究結果もあります。 サルコペニアは寝たきりや要介護状態を引き起こす重大な要因であり、また糖尿病や肺炎など様々な病気を発症しやすくなり、更に死亡率が高くなることも分かってきました。 サルコペニアかどうかはまず、自分でできる簡単なセルフチェックでみることができます。サルコペニアは運動や食事など、生活を見直すことによって予防したり、改善が見込まれる疾患のため、自身の状態をチェックし、早めに対策を始めましょう。

サルコペニアの原因による分類

若い女性の5人に1人が「隠れ肥満」という事実
将来のサルコペニアの恐れ

19~23歳の女性の身体組成を調べた研究では、5人に1人が、見た目はスラっとしていても体全体に占める脂肪の割合が多い「隠れ肥満」(BMI25未満なのに、体脂肪率が30%を超える状態)と診断され、その中には骨格筋量が著しく少ない女性も数多くいました。こうした隠れ肥満は、運動不足になりがちな生活習慣や無理なダイエットなどが原因で起こります。いわゆる筋肉の脂肪化が生じており、サルコペニアにつながる危険因子となり得るので十分注意が必要です。

サルコペニアの症状
サルコペニアでは筋肉量の減少、筋力の低下、身体機能の低下によって、次のように様々な症状が現れます。ただ、意識をしないと気づかないことも多いため、定期的にサルコペニアのセルフチェックをしてみましょう。

●筋肉量の減少によるサルコペニアの症状・リスク

①体重減少
ヒトの体重の約40%は筋肉が占めているため、まず体重が減少します。しかし、筋肉量が減っても体脂肪が増えている場合、体重が増加することもありますので、注意が必要です。

②冷え性
筋肉量が減少すると、筋肉での熱産生が減少し冷え性になりやすくなります。

③熱中症・脱水
筋肉の成分の約75%は水分で体の水分の貯蔵庫といわれています。筋肉量が減少すると体内に蓄えられる水分量が減り、熱中症や脱水になりやすくなります。

④骨粗しょう症
筋肉量が減ると筋力が低下し、骨密度も低下します。骨粗しょう症の原因となることもあります。

⑤糖尿病
筋肉量が減ると筋肉で効率良くインスリンが作用しないインスリン抵抗性という状態になり、糖尿病を発症しやすくなります。

●筋力の低下によるサルコペニアの症状・リスク

①立ち上がるのが困難
下肢の筋力が低下すると、いすから立ち上がる時に何かにつかまらないと難しくなります。

②力を入れる作業ができない
握力が低下すると、ペットボトルのふたや缶のプルタブなどを開けるのが難しくなります。

③疲れやすい
日常生活には一定以上の筋力が必要なので、筋力低下により、最大筋力に近い力が常に必要となり、疲れやすくなります。

④バランスが悪い・転びやすい
筋力低下により立っている時や歩行時のバランス能力が低下します。片足立ちできる時間が1分に満たない場合は要注意です。

●身体機能の低下によるサルコペニアの症状・リスク

①横断歩道を渡り切れない

歩行者用の信号の多くは毎秒1mの歩行速度で渡り切れるように設定されているため、筋力が低下して歩行速度が落ちると青信号のうちに渡り切れなくなります。

②階段昇降が難しい
階段の上り下りがつらくなります。

③閉じこもりがちになる
疲れて外出するのが面倒になり、外出しなくなると身体機能はさらに低下し、閉じこもりがちになるという悪循環に陥ります。

サルコペニア(筋肉減少症)の対策
サルコペニアのリスクは、セルフチェックで簡易的に調べることができます。次の(1)~(3)の3つのセルフチェックで2項目以上該当した場合は、サルコペニアの可能性が高いと判断できます。

(1)指輪っかテスト
①両手の親指と人差し指で輪を作ります

②利き足でないほうのふくらはぎの一番太い部分を、力を入れずに軽く囲んでみます。

指輪っかでふくらはぎが囲めてしまう人は、サルコペニアの有病率や新規発症リスクが高いことが分かっています。

(2)開眼立脚位テスト
①素足で、滑りにくい床に立ち、両手を腰に当てます。
②立ちやすい側の足で立ち、もう一方の足を床から5cmほど上げ、立っていられる時間を計測します。
→立っていられる時間が8秒未満の場合はサルコペニアの可能性があります。

 

(3)5回立ち座りテスト
①ひじ掛けのないいすに座り、両手を交差して胸に当て、足は肩幅程度に開きます。
②いすに座った状態から、反復して立ち座り動作を5回繰り返す。かかった時間を計測します。
5回立ち座りする動作が12秒以上かかった場合はサルコペニアの可能性があります。

サルコペニアは当院のような整形外科と内科を専門としている外来で、安心して診療を受けられます。
当院ではサルコペニアは、内科的、整形外科的な目で診られるサルコペニア専門外来で、主に高齢者(65歳以上)を対象に診療を行っています。サルコペニアの診断はアジア・サルコペニア・ワーキンググループが公表しているアジア人の握力は男性で28kg未満、女性で18kg未満、歩行速度は1秒間あたり1m未満が基準となり、握力か歩行速度のいずれかが値を下回る場合で、さらに四肢骨格筋量が低下している場合、サルコペニアと診断されます。四肢骨格筋量の低下は、正確には病院での特殊な検査機器を用いての測定が必要ですが、無い医療機関でも指輪っかテストや、下腿周囲長の低下の基準(男性34cm未満、女性33cm未満)を代用しています。
しかし、実際はサルコペニアの診断基準を満たした時点では既に進行して手遅れに近い状態もありますので、もっと早期にサルコペニアを疑うことができれば、対策がより有効である可能性があります。

当院の 寝たきり(サルコペニア)予防外来 はこちら

分子栄養療法について(犀星の杜クリニック六本木HPへ)

投稿者: みなと芝クリニック

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