2014.11.27更新
その3
また、2010年から3年間、東京大学医科学研究所の村上善則教授が研究代表者となった「(タイにおける)肝吸虫感染による胆道癌の制御を目指す研究」の研究分担者として任命されました。私の研究分担は今まで続けて参りました胆道癌の発生・進展に関わる分子を解明するとともに、その分子を標的とした治療法の開発です。タイは周知の通り、肝吸虫感染が原因となる肝内胆管癌が多く、癌の発生・進展のメカニズムを解明する良きヒトのモデルと考えられます。現在、少しずつですが分子が明らかとなり、それら分子を標的とした動物実験が進んでおります。将来は動物実験の結果をもとにタイにおける肝内胆管癌の予防や治療に関連したプロジェクトを立ち上げることを目指して行きたいと考えております。
そして最後に開業医と研究者という2足のわらじの自分を心身ともに支えてくれる妻に感謝の気持ちを捧げます。
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2014.11.27更新
その2
筑波大学消化器外科在籍中の2003年にErbB2トランスジェニックマウスを開発した上記研究所に留学して、マウス胆嚢癌を初めて目にしました。形態的にはポリープから発生する癌と過形成上皮から発生する癌の二通りがあり、癌の発生から進展までの形態変化が観察できることに興奮したことを覚えています。また、ヒトの胆嚢癌と非常に似た形態、進展を示すことから、ヒト胆嚢癌のモデルとしても応用できる可能性が示唆されました。しかし、ヒト胆嚢癌との形態的類似性は研究室のスタッフには理解されず、英文論文にしてもその重要性は認識されにくいと考え、胆道に投稿したのが今回の受賞論文でした。
米国の研究室ではヒト胆道癌に対する分子標的治療法の開発研究を、ErbB2トランスジェニックマウスを用いて行なっていました。ErbB2のシグナル伝達系に関与する分子を標的とした様々な抗体や受容体拮抗剤などを駆使し、それらの生物学的効果を、本マウスを用いて検討するものでした。帰国後は既にポジションはありませんでしたが、米国での研究を継続するために、共同研究者である筑波大学消化器内科の正田純一先生の研究室に出入りさせていただいたことは大変幸運でした。しかも、当時は研究費が全くない時でしたので、本賞受賞の知らせがあった時は大変勇気付けられました。
更に幸運なことに2008年には筑波大学の大先輩である東京女子医科大学消化器外科の山本雅一教授から非常勤講師として研究に従事する機会を与えていただき、飛躍的に研究が進みました。研究成果はJDDWおよび胆道学会総会のワークショップに採用される機会に恵まれ、「胆と膵」や「肝胆膵」から4件の原稿依頼が来ました。英文原著論文も筆頭著者として2編出すことが出来ました。共同研究者の先生方々にこの誌面を通して改めて感謝を申し上げます。
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2014.11.27更新
日本胆道学会50周年記念誌
この度、タイトル記念誌が発行されることになり、学会賞受賞者も寄稿することになりました。私は米国留学中にこの学会賞に論文が選ばれ、帰国後に表彰を受けました。今回はその時の寄稿した原稿を紹介したいと思います。少々長いので3回に分けます。自分の今までの研究に対する思いや感謝の気持ちを書きました。
「胆道一途」
東京女子医科大学消化器外科非常勤講師
東邦大学医学部客員講師
みなと芝クリニック院長 川本 徹
私は2005年の「胆嚢発癌におけるErbB2トランスジェニックマウス胆嚢癌を用いた検討」論文でこの名誉ある本学会賞を受賞することができました。MDアンダーソン癌センターサイエンスパークで行なった研究成果を報告した内容でした。受賞式は折しも帰国して間もない10月の仙台の総会時で、大変感慨深いものがあり、当時のことは鮮明に記憶しています。
そもそも胆道癌の研究を始めたのは、私が所属していた筑波大学消化器外科の初代教授である故岩崎洋治先生が胆道癌の外科治療を専門としていたため、大学院での研究テーマが胆道癌の臨床病理だったからです。私は当時、「胃癌の構造」で知られていた中村恭一先生率いる病理学研究室に派遣され、主に消化管病理の基礎をみっちり仕込まれました。その中で、胃癌や大腸癌と比較して、胆道癌との組織形態および進展様式の共通性や特異性などについて多くの症例を解析しました。その時の研究成果の一部は私の学位論文となり、「胆道」に掲載していただきました(肝門部胆管癌の肝臓側胆管における進展様式の検討 胆道10(2)131-137 1996)。
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2014.11.10更新
銀杏中毒
11月8日の土曜に救急外来で、銀杏60個を一気に食べたあとめまいと嘔気があるという患者さんから連絡がありました。銀杏の食べ過ぎによる吐き気と単純に思って受け入れたのですが、外来の看護師が「銀杏は中毒を起こすから怖いですよね」と言ったので、急いで調べましたら古くから中毒を起こすことで有名だったのです。戦後の食糧難の時代にはよく見られたそうです。小児では7個から中毒症状が出ることがあるそうです。成人では40個以上は避けた方がいいようです。症状は嘔吐、めまいが最初にあり、進行するとけいれんや呼吸困難に陥り、まれに死に至るそうです。今回も油断して患者さんを帰宅させる所でした。銀杏の毒素は3時間毎に腸肝循環するので、24時間は経過観察が必要だそうです。幸いこの患者さんは軽症で済みました。私は銀杏が結構好きなので、40個くらいは平気にいけちゃう気がします。これからは鍋やおでんの季節ですのでみなさんも注意してください。
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2014.11.07更新
高齢者介護
最近、高齢者介護について考えさせられることがありました。私は今でも介護医療に関心がありますが、現実的には不本意ながら様々な制約?により訪問診療を大々的に実行できていません。今は介護医療の様子を静観している状況です。ついこの間も介護医療費の削減が話題になっていました。利益率が他の業種と比較して高いという理由だそうです。現場に携わっている方たちは大変困惑しているかと思われます。近年の高齢者人口の増加に伴い、独居高齢者、特に身寄りのないお年寄りの増加が目立っております。元気なうちはいいのですが、一旦、けがや病気を患いますと日常生活に支障を来しますので、介護者の負担が数倍増えます。かといって、入院もさせてくれるような病院もありませんし、ご本人の気持ちが入院に否定的であれば、介護医療従事者(医師も含め)に頼らざるをを得ません。24時間四六時中のケアとなりますので、従事者の肉体的、精神的負担は想像に絶えないものです。このような状況で医療費削減行ないますと、若い人の介護従事希望者が減っていく恐れがあります。現に医師も介護医療離れが進んでいます。やはりこれからの介護医療はセンター的な施設を作り、そこに人を集めて一人一人の負担を軽くしていく必要があると思います。個人に任せるのはそろそろ限界になっているのではないでしょうか。厚労省の配慮を望みます。
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